カノラマは設立以来、新聞・専門誌・インターネットニュースソースなど国内外の様々なメディアに対してナレッジを提供して参りました。これは、メディアを通して自動車産業の発展に寄与するという目的で実施されています。これまで配信されたニュース・トピックを貴社の戦略にご活用いただければと思います。過去の注目ニュースを掲載していますので、内容を詳しくお聞きになりたい方は、お気軽にお問い合わせください。
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中国EVの強みは、もはや安さや出荷スピードだけではありません。次の競争軸として前面に出てきたのが、半導体・ソフト・車両統合をどこまで自前で握れるかです。今回のBYDの動きは、その転換点をかなり分かりやすく示しています。
CnEVPostによると、BYDは自社開発したスマートドライビング向けチップ「Xuanji A3」を、2027年にDenzaブランドの量産車へ初搭載する計画です。単なる部品内製化ではなく、運転支援の中核を自社主導へ寄せる布石として読むべきニュースです。
記事によれば、BYDは5月に4nmプロセス採用の自社ADASチップ「Xuanji A3」を公表していました。1チップで700TOPS超、3チップ構成では2,100TOPS超に達し、L3・L4自動運転を視野に入れる仕様とされています。
今回の報道では、そのチップを2027年にDenzaの新しい量産モデルへ載せる計画が伝えられました。車載化までには少なくとも1年以上かかるのが一般的とされ、チップ単体だけでなくアルゴリズム、センサー、ドメインコントローラー、電装アーキテクチャとの統合検証が必要になります。
さらにBYDは、スマートドライビング関連組織を新技術研究院へ集約し、ソフトウェアやコックピット、ドメイン制御ハードなども再編しています。つまり今回の話は、新チップの発表ではなく、量産実装まで含めた体制づくりの話です。
重要なのは、中国EVメーカーの競争が「電動化の垂直統合」から「知能化の垂直統合」へ進んでいることです。これまでBYDの強みは電池やパワー半導体、製造一体化にありましたが、今後はADASの演算基盤まで自社化できるかが差になります。
運転支援はユーザー体験に直結し、アップデートや安全性評価とも結びつくため、外部サプライヤー任せでは差別化が難しくなります。自前チップを持てば、性能最適化だけでなく、コスト、供給、アルゴリズム連携まで主導しやすくなります。
日本メーカーや部品各社にとって見逃せないのは、中国勢がEVそのものの製造力だけでなく、車載コンピューティングの支配力まで高め始めていることです。価格競争に見えていた市場が、実はソフトと半導体の主導権争いへ移っている可能性があります。
とくに日本勢は、完成車、電装、半導体、ソフトをまたいだ意思決定の速さで比較されやすくなります。BYDのようにチップ・車両・量産計画を一体で動かす企業が増えるほど、従来の分業モデルは相対的に遅く見えやすくなります。
BYDの自社ADASチップ量産計画は、新しい高性能部品の話に見えて、実際には中国EV産業の競争ルール変更を示すニュースです。これからの勝負は、EVを作れるかではなく、車の頭脳まで握れるかへ進んでいます。
2026年6月29日 14:11 より抜粋
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北米の自動車市場は、EVの売れ行き以上に「どのルールで戦うのか」が大きなテーマになっています。今回のカリフォルニアとEPAの衝突は、単なる法廷闘争ではなく、メーカーの投資計画そのものを揺らすニュースです。
AOL掲載のReutersベース記事によると、カリフォルニア州は、EPAが同州の排ガス規制特例を連邦議会へ送付したことを違法だとして提訴しました。争点は、連邦議会がカリフォルニアの厳格な排ガス基準や2035年のガソリン車販売終了方針にどこまで介入できるかです。
記事では、EPAがカリフォルニアの4件のClean Air Act特例を議会審査の対象として扱ったことに対し、州側が異議を唱えています。カリフォルニアは、これらの特例は行政上の承認であり、連邦規則ではないため、議会の取り消し対象にはならないと主張しています。
背景には、今年3月に連邦側がカリフォルニア州大気資源局を相手取り、ゼロエミッション車義務や温室効果ガス規制を争った別訴訟もあります。つまり今回は単発ではなく、州主導のEV規制と連邦一律ルールのせめぎ合いが連続している局面です。
重要なのは、この法的対立がそのままメーカーの製品計画リスクになることです。米国で全国一律規制へ戻るのか、それともカリフォルニア基準が再び強い影響力を持つのかで、EV投資、エンジン車の延命、販売地域ごとの戦略が変わってきます。
とくに複数州がカリフォルニア基準を採用してきた歴史を踏まえると、この裁判は単なる州の問題ではありません。自動車会社は、どちらに転んでも対応できるよう、複数の規制シナリオを前提に商品計画を組まざるを得なくなります。
日本メーカーにとって米国は最大級の収益市場であり、同時にハイブリッド、EV、内燃機関の組み合わせを最も慎重に考えるべき市場でもあります。規制の前提が揺れるほど、投資回収のタイミングや工場配分の判断は難しくなります。
このニュースは、北米競争が単にどのEVが売れるかではなく、州と連邦の政策のズレを読み切れるかという勝負でもあることを示しています。製品力だけでなく、政策対応力そのものが競争力になります。
カリフォルニアとEPAの衝突は、2035年のガソリン車規制の是非だけでなく、米国の自動車政策の主導権がどこにあるのかを問うニュースです。メーカーにとっては、次の一手を決める前に、まずルールの土台が固まるのを待たざるを得ない局面が続きそうです。
2026年6月29日 14:09 より抜粋
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欧州自動車産業の苦境は、販売鈍化やEV競争の激化として語られがちです。しかし今回のVolkswagenを巡る話は、もっと深いところまで踏み込んでいます。ドイツの工場を守るために、中国で開発した車をドイツで作るという発想が表に出てきたからです。
The Economic Timesが掲載したReutersベース記事によると、VWの大株主でもあるニーダーザクセン州のオラフ・リース首相は、中国で開発している車種をドイツで生産すれば、工場の稼働率と雇用を安定させられる可能性があると述べました。
発言の背景には、VWがドイツ国内4工場の閉鎖や最大10万人規模の人員削減を検討しているとの報道があります。つまり「中国で成功したモデルをドイツで作る」という案は、成長戦略というより、既存生産体制を維持するための緊急策として出てきています。
記事では、VWの本拠地を抱えるニーダーザクセン州が20%の議決権を持つ大株主であり、雇用維持への政治的圧力も強いことが示されています。さらに、PorscheがCayenneの生産をスロバキアからドイツ・ライプツィヒへ戻す案も検討していると伝えられました。
重要なのは、中国市場向けに開発した車をドイツで作るという発想そのものが、従来の欧州自動車産業の常識を崩していることです。かつてはドイツで開発し、世界へ輸出するのが基本でした。今は逆に、中国で強い商品をドイツ工場の稼働維持に使おうとしている。
これは、競争の中心が欧州メーカーから中国メーカーへ移るだけでなく、商品企画の主導権そのものも中国側へ傾いている可能性を示します。欧州の工場は、輸出拠点としてだけでなく、政治・雇用を守るための再配置対象になっています。
日本メーカーにとっても、この変化は非常に示唆的です。成長市場で作った競争力のある商品を、成熟市場の工場維持に転用する発想は、グローバル生産最適化の新しい形でもあります。
同時に、ホーム市場と海外市場の力関係が逆転したとき、企業がどこまで生産・雇用・政治を同時に満たせるかという難題も見えてきます。欧州で起きていることは、日本勢にとっても将来の警告になり得ます。
VWを巡る今回の発言は、工場の話に見えて、実際には欧州自動車産業の重心移動を示しています。中国で開発した車でドイツの雇用を守るという発想が現実味を帯びるほど、欧州の従来モデルは揺らいでいます。
2026年6月29日 14:08 より抜粋
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米国のEV競争では、新機能よりも先に「不具合をどう閉じるか」が企業評価を左右する場面が増えています。今回のテスラを巡るニュースも、単なる一件落着というより、安全問題に対してソフトウェア中心の対応がどこまで通用するのかを示す出来事として見るべきです。
Reuters配信を掲載したTradingViewによると、米道路交通安全局(NHTSA)は、2023年型Model 3とModel Yの約37万6,241台を対象に進めていたパワーステアリング関連の調査を終了しました。
問題の発端は、所有者から「ハンドルが切れない」「異常に重くなる」といった報告が出たことでした。NHTSAは2023年7月に予備評価を始め、2024年初めにはより踏み込んだ engineering analysis に格上げして精査を続けていました。
その後テスラは2025年初め、パワーステアリング支援機能の不具合に関して米国で約37.6万台をリコールしました。Reuters配信では、プリント基板上のモータードライブ部品に過電圧や過負荷がかかるのを防ぐため、OTAソフトウェア更新を投入したとされています。NHTSAはこの是正措置を踏まえ、調査を終了しました。
重要なのは、今回の結論が「完全に問題なし」という意味ではないことです。むしろ、現代のEVではソフト更新がリコールの中核手段になっており、当局がどこまでそれを是正措置として認めるのかが大きな論点になっています。
テスラに限らず、車両制御がソフト依存になるほど、不具合対応のスピード、説明責任、検証可能性が競争力になります。ハード交換より速く直せる一方で、利用者や当局が「本当に直ったのか」をどう確認するのかという別の難しさも生まれます。
日本メーカーや部品各社にとっても、今回の件は他人事ではありません。電動化とソフトウェア化が進むほど、品質管理は工場だけで完結せず、市場投入後の監視や更新運用まで含めた勝負になります。
将来の競争軸は、魅力的な機能を積むことだけではなく、不具合を早く見つけ、遠隔で直し、規制当局に納得してもらう力へと広がっています。安全問題の「閉じ方」そのものがブランド価値になる時代です。
NHTSAの調査終了はテスラにとって前向きな材料ですが、それ以上に示唆的なのは、ソフトウェア更新が自動車の安全是正の主役になったことです。EV時代の競争は、速く作ることだけでなく、問題をどう収束させるかまで含めて評価される段階に入っています。
2026年6月28日 10:47 より抜粋
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欧州自動車産業の苦しさは以前から語られてきましたが、今回のVolkswagenの話はその深さを一段はっきり見せました。単なる景気対応ではなく、事業構造そのものを作り替えなければ戦えないという局面に入っているからです。
UPIによると、Volkswagenは今後5年で最大10万人の雇用削減と4工場の生産終了を検討しています。背景には、中国メーカーの欧州市場浸透と、米国側の関税逆風が同時に重なっている現実があります。
記事では、Volkswagenがすでにドイツ国内で2030年までに5万人規模の人員削減で労組と合意している一方で、さらに踏み込んだ措置が検討されていると伝えています。最大10万人という数字は、66万人規模のグループ雇用の約15%に相当します。加えて、Volkswagenブランドの工場3カ所とAudi工場1カ所の生産停止が視野に入っているとされます。
背景にあるのは、中国ブランドが欧州販売の1割超に達し、BYDやCheryなどが存在感を急速に高めていることです。欧州メーカーは中国市場でも販売を削られ、さらに米国では関税環境が厳しい。つまり、主戦場の複数地域で同時に圧力を受けています。
これはVW一社のリストラ話ではありません。ドイツ車産業の勝ち筋が、「高付加価値車を世界へ売る」従来モデルだけでは維持しにくくなっていることの表れです。価格競争、EVシフト、投資負担、地政学リスクが一気に重なり、固定費の重い大手ほど再編を迫られています。
特に重いのは、中国勢が欧州内でシェアを伸ばしている点です。以前は中国市場での競争が主でしたが、今は欧州のホーム市場そのものに中国メーカーが入り込み、ドイツ勢の利益構造を直接揺らしています。
日本の自動車産業にとっても、これは遠い話ではありません。グローバル大手でも、複数地域で同時に競争力を失えば、雇用と生産体制の大幅見直しに追い込まれる。EV化の投資負担が大きい時代には、そのスピードが昔より速いことも重要です。
日本勢は現時点で北米やハイブリッド優位の余地を持っていますが、欧州で起きている構造転換は、今後の投資配分や工場戦略を考えるうえで強い警告になります。
VWの最大10万人削減案は、景気の谷をやり過ごすための一時対応ではありません。中国勢の台頭、欧州内競争の激化、米関税逆風を受け、ドイツ自動車産業が“前提を作り直す”段階に入ったことを示すシグナルです。欧州の構造転換は、想像以上に速く、重い形で進んでいます。
2026年6月28日 10:44 より抜粋
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中国メーカーの海外展開というと、まず東南アジアや欧州を思い浮かべがちです。けれども足元では、北米本丸の手前にあるカナダが、想像以上に重要な実験場になりつつあります。
CnEVPostがReuters配信を踏まえて伝えたのは、Geely傘下LotusのEVが7月にカナダへ到着するというニュースです。表面上は18台の出荷という小さな話に見えますが、本質は「中国勢が北米向けの販売・認証・運営体制を先に慣らし始めた」という点にあります。
記事によると、Lotusは5月に最初の18台のEletreをカナダ向けに船積みしました。これは、カナダと中国の取り決めのもとで年4万9,000台まで中国EVを低関税で受け入れる枠組みを使った動きです。Lotusはすでにカナダで6つの認定販売拠点を持ち、年内に12拠点まで拡大する計画です。
さらにReutersの取材では、奇瑞やBYDもカナダ当局と調整を進めており、今秋以降に他ブランドも本格参入する可能性が示されました。つまり今回のLotus先陣は単独の出来事ではなく、中国勢全体の北米布石の一部として見るべきです。
重要なのは、カナダ市場の規模そのものよりも、その市場特性です。カナダは米国に近い消費者嗜好、流通、規制感覚を持つため、ここでの販売経験は将来の北米展開にそのまま効きやすい。高関税や安全保障規制で米国本体が閉じている間にも、その隣で販売網やアフターサービスを育てておけば、条件が変わった瞬間に動きやすくなります。
これは単なる輸出台数の積み増しではありません。ブランド認知、認証実務、在庫回転、販売店運営、顧客反応の把握まで含めた「前倒し学習」です。中国勢の強さは価格だけではなく、この準備の早さにもあります。
日本メーカーにとって見逃せないのは、北米競争が関税や規制の壁だけで守り切れる話ではなくなっていることです。参入が解禁される前から周辺市場で足場を作る戦略は、従来型の“入ってきた後に戦う”発想を崩します。
カナダは小市場でも、北米競争の準備区域としては大きい。日本勢にとっても、中国メーカーが販売だけでなく運営能力まで蓄積していくスピードをどう見るかが重要になります。
Lotusのカナダ出荷は、販売台数の話だけではありません。北米本番の前に、中国勢が現地オペレーションの経験値を積み始めたという意味で、かなり戦略的な一手です。米国市場が閉じている今だからこそ、その隣で静かに差が開き始めている可能性があります。
2026年6月28日 10:42 より抜粋
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自動運転の議論はこれまで、「どこまで人が見守るのか」という発想で語られてきました。しかしロボタクシーが本格化すると、その前提自体が揺らぎます。運転席に人が座らないなら、そもそもブレーキペダルは必要なのか——。米国の規制論点は、そこまで踏み込み始めました。
The Registerが報じたのは、米道路交通安全局(NHTSA)が、自動運転システム専用車両から手動ブレーキや手動パーキングブレーキの要件を外す方向で規則改正を提案したという話です。
NHTSAは、ADS(Automated Driving System)専用で人間用の操作系を持たない車両について、足踏み式ブレーキや手動式パーキングブレーキを必須としない案を示しました。理由は、手動介入装置そのものが、乗員による誤操作や意図的介入のリスクになり得るという考え方です。
もちろん停止性能の基準自体をなくすわけではありません。問題は「安全に止まれるか」よりも、「誰が、どのUIで、どの責任範囲で停止を命じるのか」という設計思想にあります。人間の運転を前提とした安全基準から、完全自動運転を前提とした安全基準への移行が始まりつつあります。
この変更が重いのは、ロボタクシーの事業モデルと規制が一体化するからです。ペダルを前提にしない車両は、車内レイアウト、コスト、整備、責任分界、緊急停止UIまで全部を作り直せます。逆に言えば、規制が変わらない限り、ロボタクシーは「無人化のメリット」を十分に取り切れません。
さらに、自動運転の競争はアルゴリズムだけでなく、当局がどのアーキテクチャを安全と認めるかで差がつきます。WaymoやTesla、Amazon傘下Zooxのような事業者にとっては、ソフト開発だけでなく、法制度の読み合いも競争力そのものです。
日本でも自動運転の実装は進んでいますが、制度設計はなお慎重です。だからこそ米国の議論は参考になります。ポイントは、「人がいつでも介入できる安心」と「人が介入しない前提で最適化する安全」は、必ずしも同じではないということです。
日本メーカーやサプライヤーにとって重要なのは、ハードウェア要件が変われば、コックピット、制御系、保険、説明責任まで影響が連鎖することです。自動運転車の競争は、もはや車両性能だけの話ではありません。
ブレーキペダル撤廃案は、単なる規制緩和ではありません。ロボタクシーを「人間が運転しない乗り物」として制度側が本気で扱い始めたサインです。今後の焦点は、ペダルを残すかどうかではなく、ペダルの代わりに何を安全の基準として社会が受け入れるかに移っていきます。
2026年6月27日 09:49 より抜粋
europe-ev-targets-france-pushback-20260627
欧州の自動車政策は、最近まで「EV失速」を前提に語られることが少なくありませんでした。ところが足元では、販売回復を背景に、規制を緩めるのではなく、むしろ予定通り進めるべきだという声が強まっています。
Fuel Cells Worksの記事で見えてくるのは、フランスがこの議論の先頭に立ち、ドイツやイタリアの柔軟化要求に対して歯止めをかけようとしている構図です。
記事によると、フランスは欧州のガソリン車・ディーゼル車からの転換目標をこれ以上弱めるべきではないと主張し、オランダ、スペイン、スウェーデン、デンマークなどと連携して「阻止可能な少数派」を形成しています。背景には、Hormuz危機後のエネルギー不安を受けて、フランスや欧州全体でEV販売が伸びたという認識があります。
欧州委員会はすでに2035年に向けた規制設計を一部調整していますが、フランスはそれ以上の後退を“悪いシグナル”と見ています。一方、ドイツやイタリアはプラグインハイブリッドやバイオ燃料の扱いをより柔軟にしたい立場で、欧州内の政策軸は割れています。
この争点は、単なる環境論争ではありません。規制が後退するかどうかで、メーカーの投資配分、EV開発速度、部材調達、域内雇用、防衛的な産業政策まで全部が変わります。フランスが強硬なのは、目標を曖昧にすると企業が再び様子見に戻り、欧州のEV競争力そのものが鈍ると見ているからです。
しかも足元ではEV販売比率が回復しており、規制堅持の政治的材料も出てきています。販売が弱いから緩める、ではなく、伸び始めた今だからこそ後戻りすべきではないという論理です。
日本の読者にとって興味深いのは、欧州のEV政策が“市場が弱いから守勢に回る”段階を抜けつつあることです。規制と販売が再び噛み合い始めれば、欧州メーカーは開発の手を緩めにくくなり、中国勢との競争もさらに厳しくなります。
日本メーカーにとっても、欧州の制度変更は輸出戦略や電動化投資に直結します。ルールが揺れるか、維持されるかで、商品計画の時間軸そのものが変わるからです。
今回のフランスの姿勢は、欧州EV政策が単純な減速局面ではないことを示しています。販売回復をテコに、ルールを後退させず、産業の方向感を維持する。その政治的意思が、今の欧州では改めて強く打ち出され始めています。
2026年6月27日 09:48 より抜粋
china-ev-canada-practice-run-us-20260627
中国メーカーの海外展開というと、東南アジアや欧州の話に目が向きがちです。ところが足元では、北米本丸の手前にあるカナダが、意外に重要な実験場として浮上しています。
Reuters配信を掲載したThe Detroit Newsの記事が示しているのは、中国勢が「カナダで少し売る」ことよりも、「将来の米国参入に向けて販売・規制対応・市場感覚を先に慣らす」ことに価値を見いだしているという構図です。
記事によると、奇瑞はカナダでディーラーとの初会合を実施し、BYDは6店舗規模の販売網を計画、さらにGeely傘下のLotusや長安もカナダ展開を進めています。カナダの低関税輸入枠そのものは大きくありませんが、中国勢はそれでも先行投資を始めています。
背景にあるのは、カナダ市場が米国に極めて近いことです。消費者の嗜好、車種構成、規制、流通の感覚が米国と似ているため、ここで経験を積むことが将来の米国参入に直結しやすい。記事中でも、業界関係者はカナダを「米国向けの practice run(予行演習)」と位置づけています。
この話の核心は、中国車の北米進出が「いますぐ米国に入るかどうか」ではなく、「入れる日が来た時に一気に動ける準備段階」に移っていることです。現在の米国は高関税やコネクテッドカー規制で中国勢を実質的に締め出していますが、政治や通商の条件が変われば、一気に競争環境が変わる可能性があります。
つまり、今のカナダ展開は収益目的だけでなく、販路、認証、在庫、ブランド認知、アフターサービスの“前倒し構築”でもあります。北米市場で本当に怖いのは、参入解禁の瞬間に中国勢がゼロから始めないことです。
日本メーカーにとってこの動きは、北米競争が関税だけでは守り切れないことを示しています。中国勢は価格だけでなく、意思決定の速さと海外展開の前倒し能力で勝負し始めています。北米の制度が閉じている間にも、周辺市場で着実に地ならしを進める戦略は、想像以上に厄介です。
日本の読者にとって重要なのは、カナダが単なる小市場ではなく、北米競争の“準備エリア”になり得ることです。将来の競争は、参入後のシェア争いより前に、参入前の布石の厚みで差がつくかもしれません。
中国EV勢のカナダ急行は、目先の販売台数を追う話ではありません。米国が閉じている今だからこそ、その隣で販売網と運営ノウハウを積み上げる。この記事は、中国勢の北米戦略がすでに次の局面に入っていることを示しています。
2026年6月27日 09:46 より抜粋
china-ev-grid-five-year-plan-20260626
中国のEV競争は、販売台数や価格だけを見る段階を超えつつあります。今回の5カ年計画で見えてきたのは、EVを“走る製品”ではなく、電力システムの一部として組み込もうとする発想です。
これは単なるインフラ整備の話ではありません。車、充電器、充電拠点、送電網を一体で設計することで、中国が自動車産業の競争ルールそのものを作り替えようとしていることを意味します。
CnEVPostによると、中国の国家発展改革委員会と国家能源局は6月25日、「新しいエネルギーシステム構築のための第15次5カ年計画」を公表しました。2030年までに新エネルギーを発電量の30%に引き上げる目標を掲げ、風力・太陽光の拡大だけでなく、EVを電力調整資源として本格活用する方針を打ち出しています。
計画では、車両・充電器・充電ステーション・電力網の相互接続を進め、スマート充電と車両から電力網への逆潮流(V2G)を広げる考えです。2030年までに、車両と電力網の相互作用による調整可能な充電能力を約50ギガワットに引き上げるとしています。
あわせて、充電設備は2030年に4,000万基へ拡大し、仮想発電所の調整能力も50ギガワット超にする計画です。つまり、中国はEVの普及そのものだけでなく、普及後にどう電力側で使い倒すかまで制度設計に入れ始めました。
重要なのは、EVが自動車市場の製品カテゴリーから、エネルギー政策の中核アセットへ位置づけ直されたことです。販売補助や新車投入だけではなく、電力需給の調整、再エネの変動吸収、充電行動の制御までを含めて、自動車が国策インフラに組み込まれます。
この発想が広がると、競争力は車両価格や航続距離だけでは決まりません。通信制御、課金、充電ネットワーク、蓄電制御、自治体や電力会社との連携まで含めた“システム対応力”が問われます。中国勢が強いのは、車を安く作れるからだけではなく、こうした周辺システムまで一気通貫で押さえやすいからです。
日本でもV2HやV2Gは語られてきましたが、まだ実証や個別導入の色合いが濃く、国家計画の中心に据えられているとは言いにくい状況です。中国の今回の動きは、EV政策が環境政策からエネルギー安全保障と産業競争政策にまで広がっていることを示しています。
日本の読者にとっての示唆は、これからの自動車競争を“いい車を作る競争”だけで見てはいけないという点です。車が電力インフラの一部になったとき、どの国・どの企業がルールを握るのかが、次の覇権争いになります。
中国の5カ年計画は、EVを電力系統の調整資源に変える方向を明確にしました。これは、中国の自動車競争が販売台数競争から、エネルギーと結びついた総合システム競争へ進んでいることを意味します。
今後は「何台売れたか」だけではなく、「何台が電力システムの中で機能するか」を見ないと、中国EV市場の本当の強さは見えてきません。
2026年6月26日 09:53 より抜粋