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EVの主役は新車販売だと思われがちだが、中国では「使い終えたEVを何に戻せるか」が次の製造競争力を左右し始めている。大量導入を先行した市場ほど、廃車と交換電池から回収できる資源の規模も大きくなるからだ。
Ars Technicaが紹介した研究は、中国でEV由来の再生材が将来、電池やモーターに必要な材料の有力な供給源になり得ると示した。これはリサイクルを環境対策の付属物ではなく、製造能力の一部として捉え直す議論である。
研究は2010年から2050年にかけ、電池のリチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、黒鉛などと、モーターに使う銅や希土類について、製造需要に対して同年の再生材がどこまで賄えるかをモデル化した。電池交換や中国のバッテリー交換網も、回収・再利用の流れを増やす要因として織り込んでいる。
中国の政策も背景にある。記事では、特定の電池材料の回収率を現行の40%から少なくとも98%へ引き上げる方針と、2030年までに新車販売に占めるEV比率を60%へ高める目標が紹介される。
ただし、回収量が増えれば自動的に資源制約が消えるわけではない。低コバルト化で需要そのものが減る材料もあれば、ニッケルやマンガンのように需要増が大きく、再生材の寄与率が伸びにくい材料もある。電池化学とモーター設計が変われば、回収した材料の価値も変わる。
重要なのは、EVのライフサイクルを「販売→使用→廃棄」で終わらせず、次の製造ラインへ資源を戻す設計が競争条件になる点だ。中国が先行して抱える大量のEVストックは、回収制度と精錬能力が伴えば将来の供給源になり得る。
日本の電池・材料・リサイクル各社にとって、競争相手は完成車メーカーだけではない。回収網、選別技術、精製能力、そして化学系の変化に合わせて再生材を使い切る設計力が一体で問われる。
中国の循環経済は、資源安全保障とコスト競争の両面で影響を持つ。日本勢も回収量の拡大を待つだけでなく、どの材料がいつ戻り、どの用途に再投入できるかを製品計画と結び付ける必要がある。
EVの大量普及は資源消費を増やすだけではない。十分な回収率と用途設計がそろえば、過去に売ったEVが将来のEV製造を支える。中国のリサイクル問題は、同時に製造競争力の問題でもある。
2026年8月1日 12:05 より抜粋