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北米の自動車貿易をめぐる争点は、単に関税を上げるか下げるかではなくなりつつあります。USMCA再交渉で前面に出てきたのは、「誰が本当に米国内で作っているのか」という生産比率の問題です。
CNBCでフォードのジム・ファーリーCEOが語ったのは、その本音でした。国内生産の多いメーカーが報われ、輸入依存の高い競合には不利な条件を課すべきだという主張は、北米自動車の次の競争ルールを先取りしています。
ファーリー氏は、USMCA再交渉にあたってフォードのように米国内で多くを生産する企業が有利になる「より公平な競争条件」を求めると表明しました。対象として意識されたのは、米国内販売では大きい一方、輸入車比率も高いGMやトヨタです。
記事によると、2025年の米国販売に対する輸入台数はGMが117万台で41%、トヨタが119万台で47%でした。これに対しフォードは、米国内で200万台超を組み立て、60超の海外市場向けに31.1万台を輸出する一方、輸入は37.8万台で販売の17%にとどまっています。
このニュースが重いのは、USMCA再交渉の論点が「三国で協定を続けるか」だけでなく、「どの企業モデルを優遇するか」に踏み込んできたからです。輸入依存が高い企業は、販売台数が多くても政治的には不利になりやすくなります。
しかもトランプ政権は協定を延長せず、2036年まで年次見直しに入る道を選びました。自動車産業は対隣国貿易の18%を占める中核分野であり、再交渉が長引けば投資・雇用・調達先の見直しが同時進行で起こる可能性があります。
日本の読者にとって重要なのは、北米での勝負が販売力だけでは決まらなくなることです。日本メーカーはこれまでブランド力、商品力、価格で米国市場を競ってきましたが、今後は「どこで作ったか」が同じくらい重い評価軸になります。
とくにトヨタのように販売規模が大きくても輸入比率の議論に巻き込まれる場合、現地生産比率、部品調達、サプライチェーンの見直しが経営課題として前面化します。北米は巨大市場であると同時に、地政学的な産業政策市場になりつつあります。
USMCA再交渉の本質は、自由貿易協定の延長可否だけではありません。米国で多くを作る企業をどう優遇し、輸入依存の高い企業をどう扱うかという新しい競争ルールづくりです。ファーリー発言は、そのルール変更がすでに始まっていることを示しました。
2026年7月4日 09:26 より抜粋