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欧州市場のEV競争は、補助金や販売台数だけでなく、通商ルールそのものが勝敗を左右する局面に入っています。今回、英国の自動車業界団体SMMTが出した警告は、その現実をかなり生々しく示しました。売れる車を作るだけでは足りず、どこで部材を調達し、どの地域のルールで認定されるかまでが競争条件になるからです。
SMMTは6月30日、英国自動車産業がZEV義務化の負担と通商リスクの両面で圧迫されていると警告しました。特に英EU間の原産地規則が厳格化されると、2027年だけで約14億ポンドの関税負担が発生しうるとしています。
焦点は、EU・英国の貿易協定に基づく原産地規則です。SMMTによると、2027年1月からより厳しい要件が適用されると、英EU間で取引されるBEVとPHEVの約7割に10%関税がかかる可能性があります。業界は、電池や主要部材の現地調達比率要件を現実に合わせて調整しなければ、多くの車種が価格競争力を失うとみています。
加えてSMMTは、EU側で検討される「Made in Europe」色の強い制度設計が進めば、英国製自動車は欧州市場でさらに不利になりかねないと訴えています。単なる一時的なコスト増ではなく、英欧のEV供給網そのものが分断されるリスクがあるというわけです。
重要なのは、この問題が英国だけの話ではなく、欧州EV競争のルール設計そのものに関わるからです。EVは電池サプライチェーンの地域性が強く、完成車の価格競争力は車両工場だけでなく、セル、材料、組立地、通関条件の組み合わせで決まります。
もし10%関税が広く発動されれば、価格が上がるだけでなく、採算の薄い車種から販売が難しくなります。結果として、欧州の消費者は選択肢を失い、メーカーは投資判断を見直し、英国工場の位置づけも揺らぎます。EV移行を急ぐ政策と、実際の調達構造が噛み合っていないことが露呈しているとも言えます。
日本メーカーにとって示唆的なのは、欧州で競争するうえで完成車の魅力だけでは不十分だということです。どこで作るか、どの部材をどこから調達するか、規則変更にどう耐えるかまで含めて、商品戦略そのものになります。
英国とEUの関係は特殊に見えても、実際には今後の地域ブロック化や保護主義の先行事例です。日本勢が欧州でEVを広げるなら、販売網だけでなく、原産地規則と電池調達までを一体で設計する必要があります。
SMMTの14億ポンド警告は、欧州のEV競争が「良い車を出せば勝てる」段階を過ぎたことを示しています。通商ルールが変われば、価格、採算、投資、供給網のすべてが動く。英国EVをめぐる緊張は、欧州全体の電動化戦略の弱点を映すニュースでもあります。
2026年7月1日 17:04 より抜粋