CARNORAMA JAPAN -Automotive Views – Trends – Ideas – カノラマジャパン株式会社 【欧州】EUは中国PHEVにも関税を広げるのか・・・

【欧州】EUは中国PHEVにも関税を広げるのか・・・

EUは中国PHEVにも関税を広げるのか 欧州が自動車輸出への警戒を強める理由

中国製EVへの追加関税を打ち出してきたEUが、今度はプラグインハイブリッド車(PHEV)にも視線を向け始めた。

Automobilwocheによると、ブリュッセルでは中国の積極的な輸出攻勢をどう抑えるかが改めて議論されており、報道ベースでは中国製PHEVへの追加関税案まで浮上している。もし対象がEVだけでなくPHEVにも広がれば、欧州市場の競争条件はさらに大きく変わる。

まず何が起きているのか

EU首脳会議では、「EUの競争力」と「戦略的自律性」をどう守るかが主要テーマのひとつになっている。

その文脈で強く意識されているのが、中国から欧州に流れ込む製品、とりわけ自動車の存在だ。中国メーカーは近年、価格競争力を武器に欧州市場で急速に存在感を高めてきた。今回の論点は、その流れに対してEUがどこまで防御線を広げるかにある。

報道では、中国製PHEVに対する追加関税の検討も取り沙汰されている。現時点で正式決定ではないものの、議論の方向性としては十分に重い。

「競争条件のゆがみ」をどう見るか

欧州の自動車業界は、建前としては自由で公正な貿易を重視している。ただし、競争条件が大きくゆがんでいるなら話は別だ、という空気も強まっている。

Automobilwocheの取材に対し、ドイツ自動車工業会(VDA)の関係者は、EUが競争上のゆがみを考える際には、単発の手段だけでなく、他の政策手段との関係も含めて判断すべきだと述べている。要するに、関税だけを切り出して議論するのではなく、産業政策全体の中で位置づけるべきだということだ。

すでにEUは2024年末から、中国製EVに対して最大35%の追加関税を課している。これは既存の10%関税に上乗せされるものだ。今回の報道が事実なら、その考え方がPHEVにも拡張される可能性がある。

それでも中国勢は止まっていない

重要なのは、ここまでの関税措置があっても、中国メーカーの欧州進出は止まっていないことだ。

BYD、Chery、MGなどの中国系ブランドは、英国とEFTA諸国を含む欧州市場で2025年の販売を81.1万台まで伸ばし、前年からほぼ倍増した。2025年末時点で市場シェアは約8%、2026年4月にはほぼ10%に達したとされる。Dataforceの数字が示しているのは、関税をかけても勢いが消えていないという現実だ。

しかも中国メーカーは、EUの追加関税導入後に輸出戦略そのものを調整している。象徴的なのがPHEVの比重だ。元記事では、BYD Seal Uが2026年1〜4月のEU市場で最も売れたPHEVになり、BMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツを上回ったと紹介されている。

つまり、EVに強い規制が入るなら、別のパワートレインで攻める。中国勢はすでにそうした柔軟さを見せ始めている。

自動車輸出はすでに逆転している

さらに見逃せないのは、貿易の向きそのものが変わってきたことだ。

中国製の完全EVも、追加関税があってなおEUで買い手を増やしている。背景には、中国国内での生産コストの低さがある。たとえ関税を払っても、なお輸出採算が合う水準で作れている可能性が高い。

元記事は、Rhodium Groupの分析やEYの調査を引きながら、2025年に中国の自動車産業がEU向けに輸出した車両・部品の規模が、EUから中国への輸出を上回ったと伝えている。中国からEUへの輸出額は220億ドル規模、EUから中国への輸出は160億ユーロに縮小したという。数字の細かな通貨差を脇に置いても、構図としてはかなり象徴的だ。

欧州が危機感を強めるのは当然ともいえる。これは単なる販売競争ではなく、産業の主導権そのものをめぐる争いになっているからだ。

なぜこの話が面白いのか

このニュースの面白さは、「EUが中国勢を止められるか」という単純な話では終わらないところにある。

むしろ見えてくるのは、関税を強めれば強めるほど、中国メーカー側も輸出ミックスや販売戦略を変えて対抗してくるという構図だ。EVを締めればPHEVへ、価格競争が厳しくなれば販売網や現地展開へ。中国勢はかなり速い速度で適応している。

一方の欧州も、もはや理念としての自由貿易だけでは国内産業を守れないという現実に直面している。だからこそ、競争政策、通商政策、産業政策が一体で動き始めている。

日本から見るとどう見えるか

日本のメーカーや部品業界にとっても、この動きは無関係ではない。

欧州でルールが変われば、中国勢だけでなく、現地で戦うすべてのメーカーの競争条件が変わる。PHEVが再び政策論争の中心に入るなら、日本勢が得意としてきたハイブリッド周辺技術の評価軸にも影響が出る可能性がある。

加えて、関税が効いても中国勢が止まらないなら、次の争点はコスト、流通、ブランド、現地生産へ移っていく。これは欧州だけの話ではなく、各市場で繰り返される競争パターンになりそうだ。

まとめ

EUは中国製EVへの追加関税に続いて、PHEVにも対象を広げる可能性をにらみ始めた。

ただし本質は、関税を増やすかどうかだけではない。中国勢がすでに販売構成を変えながら欧州市場を拡大していること、そして欧州側がそのスピードに制度で追いつこうとしていることにある。

このニュースは、欧州の通商政策の話であると同時に、次の自動車競争が「車種」ではなく「市場設計」をめぐる戦いになっていることを示している。

出典

2026年6月21日 14:17 より抜粋

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