米国とカナダの自動車産業は、国境で分かれているようで、実際には一つの工場のように動いてきました。ミシガンで作ったエンジンがオンタリオのトラックに入り、逆方向にも部品が流れる。その循環に、50%関税という強い摩擦が入りました。
DWは9月8日、米国がカナダからの幅広い品目に50%関税を発表し、自動車・部品への関税も50%に倍増させた後、カナダ側が200億米ドル相当の米国製品に15〜50%の対抗措置を発動したと報じています。
記事によると、オンタリオ州財政説明局は新しい関税体制により、2026年に州内で11万9000人の雇用が失われ得ると試算しました。自動車生産は関税がなかった場合に比べ8%縮小する見通しです。
デトロイト側も他人事ではありません。DWが紹介した業界関係者は、ミシガン製エンジンがオンタリオ製トラックに、オンタリオ製エンジンがミシガン製トラックに入る相互依存を強調しました。自動車は国境を越えるたびにコストと不確実性を積み増す構造になります。
重要なのは、関税が完成車の価格だけでなく、投資決定を遅らせる点です。企業は関税の水準だけでなく、USMCAの年次見直しを含む制度の継続性を見極めなければならず、工場・部品の配置を決めにくくなります。
北米の競争力は、米国・カナダ・メキシコの分業で作られてきました。関税の応酬は国内回帰を促すように見えても、複数回国境を越える部品のコストを増やし、域外との競争力を弱めるリスクがあります。
日本メーカーとサプライヤーにとって、北米は「米国で売る」だけではなく、三国にまたがる製造ネットワークの問題です。輸出入の一回ごとの負担ではなく、部品がどの順番で国境を越えるかを含めた設計が問われます。
今回の動きは、短期の関税コストよりも、投資の見送りと供給網の再配置が中長期の論点になることを示します。北米の現地化は、工場の場所だけでなく、調達のつながりまで含めて再定義されそうです。
米加関税の重さは、国境をまたぐ一体型の生産モデルに直接かかることです。北米自動車産業は、関税率だけでなく、投資判断を支える予見可能性を失うリスクに直面しています。
2026年9月10日 12:04 より抜粋