欧州市場で中国製安価EVの流入に対抗するため、VWは2万5000ユーロ(約420万円)以下を目指すコンパクトEV「ID.2all」の市販化を急いでいます。これまでの高級・大型路線から、欧州の主流である「Bセグメントの実用コンパクト」へ各社がシフトし始めています。
コスト削減が至上命題となる中、ステランティスは中国・寧徳時代(CATL)などと組み、欧州内にLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーのサプライチェーンを構築中。これまで三元系(NMC)が主流だった欧州でも、普及モデルへのLFP採用が急速に進んでいます。
ルノーはEV・ソフトウェア専門組織「アンペア」を通じ、新型「ルノー5」などの開発期間をこれまでの4年から3年以下へと大幅に短縮。意思決定と開発のステップを徹底的に効率化し、俊敏な中国メーカーのスピード感に対抗する構えです。
当初の過酷な案から大幅に緩和されて合意に達した次期排ガス規制「ユーロ7」。これにより、自動車メーカーは内燃機関(ICE)やマイルドハイブリッド車を想定より長く、低コストで販売し続けることが可能になり、EV一本足打法からの軌道修正が行われています。
ドイツをはじめとする主要国でのEV購入補助金突如打ち切り以降、欧州のEVフリート(法人・個人)需要が減速。その受け皿として、トヨタをはじめとする非プラグインのハイブリッド車(HEV)の販売が堅調に推移し、現実的な選択肢として再評価されています。
EUによる中国製EVへの追加関税措置が議論を呼ぶ中、BYD(ハンガリー工場)や奇瑞汽車(スペイン工場)など、中国勢は関税を回避すべく欧州域内での直接投資・現地生産化を猛烈なスピードで進めており、規制が逆に現地化を促す結果となっています。
2035年の新車CO2排出ゼロ規制に向け、ドイツ勢を中心に「e-Fuel」を利用した内燃機関の存続を求める動きが根強く続いています。特に高級車ブランドやスポーツカーセグメントにおいて、エンジンのエモーションを残すための技術投資が加速しています。
安全性能評価機関のユーロNCAPは、タッチパネルに機能を集中させすぎる車両に対し、ウィンカーやワイパー、ハザードなどの重要機能に物理ボタンを残さなければ最高評価(5つ星)を与えない方針を示唆。インパネデザインのトレンドに変化の兆しが見られます。
ボッシュ、コンチネンタル、ZFなど、世界をリードしてきたドイツのメガサプライヤーが相次いで大規模な人員削減や拠点統合を発表。内燃機関向け部品の需要減と、EVシフトへの投資負担がサプライチェーンの底辺を揺るがしています。
自動運転(レベル3)の社会実装や充電時間の退屈しのぎを見据え、BMWが「AirConsole」を導入するなど、車内でのインフォテインメントや本格的なゲーム体験の提供が競争軸に。プレミアムセグメントでは「走りの良さ」と同等に「デジタル体験」が重視されています。
中国市場が「完全なスマホ化と圧倒的な価格競争」で突き進む一方、欧州市場は「インフラ整備の遅れ」「購入コスト」「既存の雇用維持」という極めて泥臭くリアルな課題に直面しています。
一時期の「2030〜35年までに完全EV化」という急進的なスローガンから、現在は「ガソリン・ハイブリッドの延命」「低価格EVの自国生産」という現実路線への揺り戻し(キャズムの克服期)が起きているのが最大の特徴です。
主な参照媒体: Automotive News Europe(欧州自動車ニュース), ACEA(欧州自動車工業会)市場統計レポート, 各社プレスリリース(VW, Renault, Stellantis)
考察キーワード: ユーロ7緩和、LFPバッテリー現地化、中国製EV関税対策、物理ボタン回帰
2026年6月22日 14:39 より抜粋